ミニッシュ広報部
手塚治虫×リゲッタカヌー奇跡のコラボ!代表高本に手塚コラボの裏側をインタビュー
4月7日、5月15日に手塚作品とコラボレーションしたリゲッタカヌーが発売されます。今回は、発売に先駆けてシューズミニッシュ広報部が代表の高本にインタビュー。コラボ実現のきっかけから製造秘話、そして、モノ・マガジンに取材していただいた手塚プロダクション代表松谷様との対談の様子を振り返っていただきました。
プロフィール
(有)シューズミニッシュ代表取締役社長
高本 泰朗(たかもと やすお)
1975年生まれ。大阪市生野区出身。家業であるサンダルの受託製造を行うタカモトゴム工業所を受け継ぎ、社名を(有)シューズミニッシュへ変更。デザインと機能性を兼ね備えた靴「Re:getA」「Regetta Canoe」を製造・販売。代表となった現在も、靴職人兼デザイナーとして靴作りを行なっている。
手塚プロダクション代表取締役社長
松谷 孝征(まつたに たかゆき)様
1944年生まれ。神奈川県横浜市出身。大学卒業後、様々な職を経験し実業之日本社へ入社。漫画サンデーに配属され、手塚治虫の担当編集者となる。1973年手塚プロダクションに入社。手塚治虫が亡くなる直前までマネージャーを務めた。ブラック・ジャックのモデルと言われている。
手塚作品だからこそコラボが実現した
広報部:今年4月、5月に手塚作品とリゲッタカヌーのコラボ商品が発売されますが、そもそもコラボが実現したきっかけは何ですか?
高本:きっかけはファンの方からのお声がけです。その方が、5年くらい前からリゲッタカヌーのファンでいてくれたみたいで。「リゲッタカヌーと手塚作品のコラボをやってみたらおもしろくないですか」とお話をいただいたんです。
広報部:お話をいただいた時はどんなお気持ちでしたか?
高本:正直、悩みましたね。というのも、リゲッタカヌーというブランドを立ち上げた時に「OEM商品やコラボ商品を作るのはやめよう」と決めていたからです。OEM商品を製造していた頃、自分の知らないところで色んなリゲッタのロゴが乱立してコントロールが効かなくなって。自分が決めたことに反することになるのでやめようか迷いました。
広報部:しかし、やろう!と決断したのはなぜですか?
手塚作品の他にも多数の漫画本が並ぶ打合せスペース
高本:手塚作品は、僕の人生に影響を与えた”特別に”好きな漫画だったんです。靴の専門学校に通っていた時に同級生から「将来どんな靴作りたいの?」と聞かれたとき「漫画みたいな丸い靴を作る」って答えていたんです。当時は、おもしろい靴を作りたいという意味で答えていたんですが、思い返すと手塚作品のイラストから影響を受けてるんじゃないかなと。あの丸みのあるイラストの足元を無意識に見てたんじゃないかなと思います
もし、今回のコラボが他の漫画やキャラクターであればきっとお断りしていたと思います。手塚作品だからこそ、純粋に「やりたい!」と思いました。あとは、きっかけをくださったのはファンの方で、お客さんが喜んでくれるのであればやるべきだなと思いました。
キャラクターの特徴を緻密に落とし込んだデザイン
広報部:これまで作ってきたリゲッタカヌーと今回のコラボ商品で異なる部分はありますか?
高本:大きくは変えていないです。靴底をハード、それ以外の部分をソフトと呼んでいるんですが、ハードはこれまでと同じものを使用しています。ハードを変えてしまったらリゲッタカヌーでは無くなってしまう。リゲッタカヌーの歩きやすさはそのままに、ソフト部分をキャラクターに合わせてどう作っていこうかと考えていきました。
ただ、ハードに色付けしたことは新しい試みですね。今までは茶色や黒が基本でしたが、今回はキャラクターに合わせて配色していきました。
広報部:各キャラクターのデザインについて詳しく教えてください。
終始楽しそうに商品について語る高本
高本:最初にハード(靴底)から選んでいきました。アトムは定番キャラなのでリゲッタカヌーの定番であるビッグフットという一番丸いソール。ブラック・ジャックは傷があるので底に線が入ったものを、火の鳥は飛び上がっている様子を表現するためバナナヒール、逆にピノコや三つ目は小さいのでペタンコのものを…といった感じで。
広報部:確かに言われてみれば、各キャラクターによって靴底の形が違いますね!一番苦労したキャラクターのデザインはどれですか?
高本:火の鳥です。だって実在していないし…(笑)というのは冗談で、火の鳥に使用されている色は黄色のみなので、配色をどうしようかと。火の中から出てくるのを表現するためアウトソールを赤にしました。あと、ストラップ部分はスネーク柄のフェイクレザーを使用しているんですが、これ、羽毛に見えるでしょ?
広報部:!! 本当だ。こんなに細かい部分までデザインが考えられてるんですね。
高本:デザインばかりこだわりすぎないようには気をつけていますけどね。「普段履くには目立って恥ずかしい」とお客さんが思うのは嫌なので。
広報部:手塚コラボ商品はどんな方に履いてもらいたいですか?
高本:手塚作品はおそらく50~60代の男性ファンがほとんどだと思うんですが、お子さんがお父さん、お母さんのためにプレゼントしてくれたら良いなぁと思います。ちょうど発売も父の日・母の日が近いですし。
あとは靴が作られた背景を感じてもらえると嬉しいです。ただ単純にデザインがかっこいいだけではなく「このデザインにはこんな思いが込められている」というストーリーを知ってもらえたらなと。そして最終的にはリゲッタカヌーのファンになっていただけたらと思います。
コラボ商品を作ることは会社にとってお祭りイベントのようだった
手塚広報ミーティングの様子
広報部:商品が完成した時はやっぱり嬉しかったですよね?
高本:僕個人としての喜びよりも、会社のみんなで作り上げた喜びの方が大きいですね。うちの商品企画部は20代から30代前半の社員が多く、手塚作品の世代じゃない。その子達が協力してくれるかが不安でしたが、僕の思いや考えをしっかり伝えようと思い、手書きの説明資料を渡しました。そしたら、想像してたよりノリノリでやってくれて。このコラボ商品を通して、みんなのやる気に繋がったことが一番嬉しかったです。
広報部:今回のコラボは会社にとって影響力のある出来事だったんですね。
高本:手塚広報ミーティングという会議で販売戦略などを練っていますが、今回広告を使った宣伝を考えていて、これは会社にとって初の試みです。コラボ商品をきっかけに、これから会社がやっていくべきことに挑戦できていると思います。
高本は「自分1人が納得して作るのでは意味がない。会社のみんなでやることに意味があるんだ」と語っていました。10枚にわたる説明資料を社員に渡し、手塚コラボに対する自分の考えを伝えたそうです。思いをきちんと伝えるプロセスがあったからこそ、社員も楽しく取り組めたのではないかと思います。
靴を作り続けることが自分の使命だと確信した対談
広報部:手塚プロダクションの代表である松谷さんとの対談はいつ決まったんでしょうか?
高本:手塚プロダクションさんとの最初の打ち合わせで、僕が事前に見に行った手塚治虫記念館の話をしたら盛り上がり「商品が完成したら、うちの社長とぜひ対談しましょうよ!」と言ってくださったのが始まりです。その時は「人生何が起きるかわからないなー…」と静かに喜びを噛み締めていました。
対談当日はモノ・マガジン様に取材していただきました
広報部:対談の前日~当日は緊張しました?
高本:前日ね、倒れたんです(笑)あまりの緊張だったんでしょうね。こんな動悸がおかしいと感じたの初めてでしたよ。「もし何か起きた時は頼む」と妻にLINEで宿泊しているホテルの場所を伝えたんですけど、既読だけついて朝に「生きてたー?」と返事がきましたけどね…。
一同:(笑)
お互いの著書について話し合う様子
広報部:対談ではどのようなお話をされたんですか?
高本:もう緊張して何をしゃべったかあまり覚えてないんですけど、特に印象に残っているのは、僕が靴作りで大切にしている”2つの丸いもの”の話に共感してくださったことです。
人間って目、鼻の穴、耳、胸、肩、お尻…と少し大きさのちがう2つの丸いものが1セットである。赤ちゃんがお母さんに抱かれて安心するように、2つの丸いものには母性があって、そういう人間が自然と大切にしているものに、ちなんだモノを作りたいんですという話をしたら「それ、手塚先生も同じことを言ってたなぁ」とおっしゃってくださり嬉しかったです。
広報部:ものづくりの大切さという点で共通の意識をお持ちなんでしょうね。
高本:僕が松谷さんに「サインください」と本を開いて渡した際に、「ここはダメだ」と次のページにサインをしてくださったんです。開いたページにはイラストが描いてあって、作品がある場所にはサインを書かないと反射的に取った行動から、ものづくりを本当に大切にしている方なんだなと感じました。
代手塚治虫壁を越える言葉(松谷様著)
広報部:対談を終えて、靴作りや高本さん自身に何か影響はありましたか?
代表でありながら現在も靴作りも行う
高本:自分のやりたいことが確信に変わりました。僕が目指しているのは親子代々で履いていける靴を作ること。今回コラボのお話をいただいた時、小学5年生の息子に「お父さん、ブラック・ジャックに靴履いてもらえるかもしれん」と話したら「やったー!」と喜んでくれて。学校の図書館に手塚作品が置いてあったり教科書にも載っているみたいで、僕が好きだったブラック・ジャックを今の小学生も知っているんです。
手塚先生も、世代を超えて愛される作品を目指していて、僕も同じで「僕が作れるこの丸い靴をファンの方に向けて世代繋いで作っていくんだ」と改めて確信しました。
編集部まとめ
今回のコラボレーションは長年手塚作品のファンであった代表の高本にとって、また、会社にとっても大きく影響を与えたことがわかりました。
今年から、シューズミニッシュの理念は「楽しく歩く人をふやす」に一新。商品を購入してくださったお客さんが楽しく歩いてほしい、また、商品を作る私たち社員自身も楽しくありたいという考えが込められています。
今回のコラボ商品は、社員一丸となって作り上げることができ、楽しく歩く第一歩を踏み出せたのではないかと思います。
松谷様との対談は4月2日(月)発売のモノ・マガジンに掲載予定です!今回の記事では語られなかった詳しい内容が載っておりますので、そちらもぜひチェックしてみてください。
社内インタビューを行うのは初めての試みでしたが、取材班にとって楽しいインタビューとなりました。ご協力いただいた高本社長、ありがとうございました!
全体企画:真田 貴仁
インタビュアー:五十嵐 彩乃(株式会社アイデアプラス)